地方移住のリアル—準備から実践までの軌跡

移住の失敗は誰もが避けたいもの。
失敗すれば、精神的にも経済的にも大きなダメージを受ける可能性があるため、私は何度も問い合わせや検討を重ねました。
なぜ移住をするのか?
・子どもを自然の中でのびのびと育てたい。
・長崎はかつて住んだことのある土地であり、土地勘があり、知人もいる。
・転職の予定ではあるが、転勤という方法が取れる可能性もあり、もしそれが可能であれば経済的な心配が少ない。
移住には人それぞれ、家族それぞれの理由があるでしょう。
「地方でのんびり暮らしたい」と思っても、移住先で何をしたいのかを明確にしないと、「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
子どもの食育のために菜園を作り、行く行くは本格的に農業をしたいと考える人もいるかもしれません。実際に畑仕事は大変だし、経験がなければ数年は誰かについて学ばなければなりません。経済的に自立できるまでの期間を計算し、生活費はしっかりと貯めておかなければなりません。
「地方=のんびり」ではありません。
生活の基盤をしっかり作るためには、地域の行事や近所付き合いもあり、都会とはまた違った忙しさがあることもSNSを通じて知りました。
曖昧な理由で移住して「失敗したから戻ろう」とはなりたくなかったので、真剣に計画を練りました。
パートナーや家族の合意は大事
パートナーや家族に「えっ?移住?なんで?嫌よ」と言われると移住の実現は困難です。
夫または妻が移住に積極的で、パートナーは無関心か反対というケースはよくあるようです。
「では、私だけ行くから。それぞれお互いに好きな場所で暮らそう。」と家族がバラバラになるのは決してお勧めできません。
なぜなら家族が断絶したり、そのことが離婚につながるケースを移住後いくつも見聞きしたからです。
何度も話し合いを重ねることが大切だし、合意に至らなければ諦めるのもひとつの選択だと思います。家庭が壊れる移住はする意味がないからです。
どういう移住スタイルを取るのか?
移住生活を成功させるポイントのひとつが地域社会へなじむことです。
地域の行事や地域の清掃などの共同作業に参加することで、地域の一員として周囲から認知されることになります。
仕事や家庭の事情でそれが難しいという方もいらっしゃるでしょう。
移住された方の中には2拠点生活という方法を取っていらっしゃる方もいます。
そういった方々は滞在中には積極的に地域の方と関わり持って地域に溶け込んでいっているようです。
人と関わるのが苦手、もしくは交流はしたいけど密なのはちょっとと思われる方は別荘移住などを選択される方もいらっしゃいます。
ただし、2拠点生活は現居住地と移住先を行き来するための交通費や二重に生活費がかかるなどのリスクもあります。もしも、どちらか単独での移住をした場合、パートナーと別行動になるため、すれ違いのリスクにも気を付けなければなりません。
条件をリストアップ
移住の条件は、人それぞれです。
農家を目指しているのであれば、畑があるところを探すでしょうし、子どもがいれば学校に通いやすいところ、高齢者であれば病院が近いところを探すかもしれません。
これは絶対に譲れないという条件をあげて絞り込むのがお勧めです。
なかなか考えがまとまらない場合は、自治体の移住担当者や民間の不動産業者に相談して条件を整理するのもいい方法です。

自分でできる情報収集とは
移住したい地域が決まっている方は、その自治体の移住相談窓口に問い合わせるのはもちろんなのですが、お勧めなのは直接窓口や相談センターを訪ねて相談することです。
今は出張相談会が開催されたりしているので、たとえば東京などでも直接相談員さんに相談することができるので、相談会のチェックをされるといいと思います。
こちらが気づかない問題点や確認しなければならないことを教えてくださることもありますし、支援金についても詳しく説明していただけます。
資料をいただけるのもとてもありがたいことでした。
まだ移住先が決まっていない方は、移住サイトなどがたくさんありますので、そちらを活用するという方法もありますし、今はLINEなどで相談ができるところも多いですよ。
とりあえず体験というお試しも
「その地域で暮らした経験がない」「移住の決断はつかないけれど、その地域のことを知りたい」という人は、お試し住宅を利用するのもひとつの手だと思います。
施設によって滞在可能期間は1泊から1〜2年とさまざまなので調べてみましょう。
農作業を手伝う体験ツアーへの参加や、体験つきの農林・漁村民宿に泊まることをきっかけに移住した人もいます。
自治体によっては移住体験の補助金が支給されるところもあります。
我も休暇を利用して、何度か長崎を訪れました。
出かける前にあらかじめ調べて住みたい地域を絞り込んでおきました。
まずその地域を中心に環境やお店、病院などを見て回ることと住まいを探すことが目的でした。
また、自家用車は持たない予定にしていたので、車が必要と言われている坂の長崎で暮らしていけるのかを確認したいというのもありました。
結果、住まいまでは決められなかったのですが、環境にも満足。
中心部はバスや電車がひっきりなしに走っており、私が住みたい地域もバスが15分に1便通っているので、自動車は必要なさそうということで、「ここに来る?」と心が傾いたのです。
話し合いの結果、引っ越しの多い3月を避けて2月に移住をする計画を立て、不動産屋さんに家を探してもらえるようにお願いして帰ってきました。

空き家を見学する際の注意点
今全国的に空き家が増えています。
当初は空き家に住むという選択はなかったというよりそういう発想がなかったのですが、不動産屋さんからの紹介で住むことになりました。
地方の空き家を手に入れるルートは、不動産業者だけでなく、自治体でも紹介してもらえる場合があります。
最近では空き家バンク制度を設ける自治体が増えています。購入もできますし、私のように賃貸もできます。
不動産屋さんにお願いしていた家の見学に行ったのですが、とてもきれいな物件もあります。本当に空き家が多いのには驚きました。
不動産さんが紹介してくれる空き家はチェックがなされていると思うのですが、個人的に空き家を買いたい、借りたいと考えたとき、傷んでいる物件もあるので、見学の際は水回りを中心に家の状態をしっかりとチェックすることが大切です。
仕事はどうやって探したらいい?
東京にUIターン転職の相談窓口や、人材バンクシステムを用意している自治体が数多くあるので利用してみてはいかがでしょうか。
「ハローワーク・インターネットサービス」は市町村まで対応しているし、既に地域を絞り込んでいる人には便利だと思います。
「全国新規就農相談センター」のホームページでは、農業法人の求人情報のほか、農業を始めるための情報が手に入ります。
移住前に準備したいこと
移住には引っ越しを伴います。荷物の量や引っ越しの時期によっては、引っ越し費用がかかります。
また、空き家や中古物件を購入した場合、建物の補修費用等が予想以上にかかるケースもあるので、いざというときのための貯蓄が必要になります。
また、移住先によっては車が必須のところもあるので、運転免許がないと移住する場所はかなり限定されてしまいます。可能な限り免許は持っている方が良さそうです。
お店が少ないところに住むとネットショッピングの機会が増えるので、パソコンやネット環境も必要になります。
移住をしたら
無事、引っ越しが終わったら、挨拶回りなどがあるかもしれませんが、地域の習慣なども含めどこまでしたらいいのか、ご近所に尋ねた方がいいかもしれません。
私は転入の際にいただいたチラシに「自治会に加入しましょう」というものがあり、窓口で自治会を紹介してもらいました。
後日自治会長さんが訪ねてきてくださり、自治会に加入。今年度は自治会の組長(順番に回ってくる)をさせていただき、他の組長さんと地域活動させていただきました。
自治会活動を通して近所の方とのお付き合いも増えました。
自治会への加入はお勧めです。